スカイ・クロラ イノセン・テイセス総括

 上地優歩先生とあやめぐむ先生に敬意を込めて。素敵な作品をありがとうございました。
 ではネタバレ改行。
スカイ・クロラ イノセン・テイセス(2) (BLADE COMICS)
スカイ・クロラ イノセン・テイセス(2) (BLADE COMICS)
 この作品の最後には草薙水素と函南優一が登場する。イノセン・テイセスは初期のキルドレの物語だったというわけだ。オリシナがどうなったのかは語られない。スカイ・クロラ原作の結末、スカイ・クロラ劇場版の結末がそれぞれあって、イノセン・テイセスはそうきたか、と。流れとして劇場版に近い方にいきそうな感じはするが同じにはしないだろうと考えてはいたので、何となく納得した。
 舞台は過去のラウテルン社。最強の敵はロストックのチータ。チータに関してはスカイ・クロラシリーズのネタバレになってしまうので詳しい言及は避けておこう。
 全体を通しての感想をざっと書いてみる。
○悪かった点
 残念ながらこれはもう、戦闘機がかっこよくなかったのと、空戦機動がわかりにくかった、この2点が最大のポイントだろう。ここがしっかり描かれていないと男の子がついてこないのだ。というか、男の子は確実にここに期待している。
 当時のラウテルンは混成部隊だったのかもしれないし、後から登場する散香を引き立てる目的もあったのかもしれない。しかし、せめて例えばチームごとだけでも同じ機種にしてくれたら分かりやすかった。ロストック機との空中戦にしても、敵味方が判別しにくいのがネックになっている。空中戦の描写に関しては、私は映画から入ったので、これをどうやってマンガで描くんだろうという興味もあった。やっぱり難しいんだと思う。
 ちなみに、原作である小説は機体の動きをエルロン・エレベーター・ラダーで表現しているので、固定翼機の知識がないと理解が難しい。その分、好きな人にはたまらない。このあたりは、やはり文章・映画・漫画という媒体のそれぞれのよさがあるのだろう。
○良かった点
 戦闘機の代わりに抜群に魅力的なのが主人公のオリシナをはじめとしたキャラクターたち。見た目のうまさもさることながら、それぞれの登場人物にしっかり動機付けがされているので奥行きが出ている。例えばタカハシ。最初はオリシナに突っかかってあのきれいな髪を切らせちゃって「タカハシァ!」っていう状態だったんだけど、タカハシが飛ぶ理由が明かされてオリシナと打ち解けたりしていくストーリーは読んでいて気持ちがよかった。私の場合は雑誌連載で追いかけていたのでよけいにそう感じた。
 絵の面では私の好みも入るのだが、スノエダの描き方がすごくうまい。ヒナギが戦死した後、扉絵で悲しみをたたえたスノエダの一枚絵が強く印象に残っている。悲しみを表に出さないでオリシナと明るく接したり、ついにはポロポロ泣き出したり。ディフォルメキャラのギャグを挟みつつ、見事に描かれていた。スノエダのような立場のキャラクターは原作にも映画にも存在しないので非常に重要なスパイスとなる。スノエダはスパイスにとどまらない存在で非常によかった。
 スノエダってのはササクラとも違って、戦いへと飛び立ってゆくパイロットたちを見送って、ひたすら心配して帰りを待っている存在なのな。もとより死を覚悟しているパイロットとは対極にあって、戦死者が出れば泣くし、負傷したタカハシが帰還した時には走って迎えに行くし。こういう感情を出せるキャラクターをしっかり描写したのは凄い。基地内でこういうポジションはスノエダだけだったから、対比として広がりが出ている。あとちょっと大事なこととして、CVは大原さやかを所望する。
○表紙
スカイ・クロライノセン・テイセス 1 (BLADE COMICS)
スカイ・クロラ イノセン・テイセス(2) (BLADE COMICS)
 Amazonに表紙の画像が上がっていて見ることはできるのだが、実際手にしてみると印象が全く違う。裏表紙までを合わせた一枚の絵として描かれているので、ぜひカバーを外して広げて、じっくり見てみてほしい。これは読む前にやるもよし、読了して浸りながらやるもよしだと思う。
○余談
 まあそんなわけでつらつら書いてみたわけだが、この文章の大半はポメラDM10を使って、電車での移動中とファーストフード店内にて草稿として書き上げた。あとからPCで加筆修正しているのでおかしなところもあると思うのだが、試行錯誤の途中ということで大目にみていただきたい。もちろん突っ込みは歓迎。
 ひとまずこれで義理は果たせた、かな?
 本当にお疲れ様でした。